元不登校にして不登校教師が 親でも先生でもない「かくれた教育者」であふれる 場をつくる

最近印象に残った言葉(言いにくいことをどう伝えるか)

2024/06/20
 
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その言葉は、『だから僕たちは、組織を変えていける』著者の斎藤徹氏による「だかぼくオープンイベント」(2024年5月15日オンライン開催)での言葉だった。それは、「『相手の視点から世界がどう見えるか』を想像する習慣をつけると、生きる上で役立つ」という言葉だ。

イベントのお題は「言いにくいことを、どう伝えるか」であった。言いにくく伝えられていないことについて、1、自分に主導権がある 2、対等な関係性 3、相手に主導権がある場合に分けて解説された。序盤では参加者がどの場面で一番言いにくさを感じているのかアンケートをとった。今回の参加者では自分に主導権がある場合に最も言いにくさを感じる人が50%、対等な関係性の場合に言いにくさを感じる人が29%、相手に主導権がある場合に言いにくさを感じる人が21%であった。私は「相手に主導権がある場合」に投票した。

私の職業人生は上司との関係性に悩む歴史だった。クライアントと上司との板挟みになりがちで、憤りで眠れぬ夜を過ごすこともあった。雇われない働き方にすることで悩みの大半は消えたが、相手に主導権がある関係性がなくなることはない。「言いにくいことを、どう伝えるか」は、人生の大切な課題である。私は自身を振り返り、思索する貴重な機会を得た。

共通して大切な技術は、相手を尊重しつつ自分の意見を伝えるという「アサーティブな対話」である。自分だけの視点でモノを言う「アグレッシブな対話」ではなく、ただ相手に合わせる「ノンアサーティブな対話」でもない。そこで大切になるのが「相手の視点」で傾聴すること。途中で反論や評価しない。共感しながら傾聴するが、ここで気をつけることがある。決して同調せず、共感するのだ。同調すると、グチ大会になってしまいがちだからだ。

では共感をどう伝えるか。共感は非言語で伝えると良い。おだやかな表情でいることや、相づちやうなずきなどの反応である。「能動的な傾聴」ともいう。「能動的な傾聴」は安心の場をつくる能動的な活動だ。傾聴することで問題の5割くらいが解決に向かうという。

私たちは、コミュニケーションの問題に向かうとき、どうしても「伝え方」「話し方」に注力する。自分の視点に固執するあまり、「アグレッシブな対話」に頼り、本来の目的である「伝わること」にたどりつかない。より大切なのは、「話す技術」より「聞く技術」だったのだ。そこでは「相手目線で世界がどう見えているか」と視点をうつすことが必要。だから、普段の生活でも「相手の視点」を意識すること。その習慣化がコミュニケーションを円滑にする上で欠かせないスキルを醸成するはずだ。

自分に主導権・対等・相手に主導権という3つの場面で一番難しいのが、相手に主導権がある場合だと斎藤氏はいう。だが、パワハラ系上司に言いたいことを伝えるコツも「相手に視点をうつす」ことだという。

相手に視点をうつしてみよう。ここで欠かせない知見はリーダーが陥る「責任感のワナ」である。組織をリードする立場の人間の思考には、自律を奪う特性がある。成果へのプレッシャーで人を従属的にしてしまうのだ。そしてこれは、誰にでも起こることだと理解しておかなければならない。リーダーの役割を経験した人はすべからくこのワナにはまる。まじめな人ほどおちいりやすく、よかれと思って管理的な行動を強めてしまう極めて人間的な思考回路なのだ。私はこれまで、かつての上司に対し、人として軽蔑の眼差しを向けてきたのだが、今回このことを知って、上司に対する憤りが不毛なものであったと思い至った。

さて、視点を上司の方にうつしてみたとき、責任の圧に不安感や孤独感をいだいている上司の心情は、「信頼できる人間がほしい」なのだそうだ。相手に主導権がある場合、言いにくいことを伝えるためにまずやらなければならないこと。それは相手に信頼されることだったのだ。上司も部下も「組織をよくしていきたい」という思いは一緒のはず。斎藤氏から、信頼できる人間だと認められるための努力の要素が紹介された。それは「真実性」「共感性」「論理性」の3つを揃えることだ。そして、うそいつわりのない自分の言葉で「組織をよくしたい」という情熱を伝えることも大切だという。

私は、かつての上司たちから絶大な信頼を勝ち取ることはできなかった。どの上司にもうそいつわりのない本心で向き合っていたつもりだが、それだけでは足りなかった。「相手の視点」でものごとを考え、共感をもってロジカルに発信できていたら、職場で悩むことが減り楽しく働けていたかもしれない。

今回印象に残った言葉は決して革新性があるものではないが、わかっていてもできていないことの中で、最重要の習慣であると感じている。組織において言いにくいことを言い合える健全な関係性を持つことができれば、私たちの人生の苦難のほとんどは好転するはずだ。

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